uro3000’s blog

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仏陀

昔、ある深い森に賢いウサギが住んでいました。ウサギには、サルと山犬とカワウソの友達がいて一緒に仲良く暮らしていました。4匹は賢者として他の動物から尊敬されていました。

ある時、ウサギは明日が布施をする日だと思い出し、他の3匹に言いました。

「明日は食を請う人に施しをする日だよ。しっかりと教えを守って施しをすれば、きっと良いことがあるよ。食を請う人が来たら、みんな自分の食べ物を分けてやるんだよ」

「はい、よく分かりました」一同は答えました。

翌朝、カワウソがガンジス河の岸に行くと、漁師が捕った赤魚が砂の中に隠されていました。カワウソは、魚のにおいが気になって岸辺を歩き回っているうちに埋まっている魚を見つけました。

「この魚はだれのですか」と三度呼びかけましたが、誰も返事をしなかったので、自分の家に持ち帰りました。

山犬も獲物を探し歩いているうちに、田んぼの中の番人の小屋に、二串の肉と大トカゲと牛乳の入った壺を見つけました。「これはだれのですか」と三度声をかけましたが、誰も返事をしなかったので、自分の家に持ち帰りました。

サルも、森の中でマンゴーを見つけ、自分の家に持ち帰りました。

ウサギは森中をかけまわってみましたが何も見つけられませんでした。

翌日になりました。帝釈天バラモンの姿に身を変え、カワウソのところへ行きました。バラモンがカワウソに施しを求めると、カワウソは詩を唱えました。

「ガンジス河の 赤魚 ここにあります バラモンよ わたしの布施です 召し上がれ」

バラモンは魚に手をつけずに次に山犬のところへ行きました。バラモンが山犬に施しを求めると、山犬は詩を唱えました。

「畑の番を する人の 食べ残したる 肉などが わたしのものに なりました これらの食物 召し上がれ」

バラモンは肉にも牛乳にも手をつけずに、サルのところへ行きました。バラモンがサルに施しを求めると、サルは詩を唱えました。

「よく熟したる マンゴーと 冷たい水が われのもの バラモンさまよ 遠慮なく このマンゴーを 召し上がれ」

バラモンはマンゴーに手をつけずにウサギのところへ行きました。バラモンがウサギに施しを求めると、ウサギは言いました。

「どうか薪を集め火を起こして下さい。わたしはその火の中に飛び込みます。わたしの体が焼けたら、その肉を食べて、修行に励んで下さい」

そして、ウサギは詩を唱えました。

「このわたしには 胡麻がない 豆もなければ 米もない 火に飛び込んで 焼かれたる ウサギの肉を召し上がれ」

帝釈天はウサギの言葉を聞き、神通力によって薪火を作り出しました。ウサギは「もし、わたしの毛の中に、ノミやシラミなど、生き物がいたらそれを殺してはならない」と念じて、3回体を振り、薪火の中に身を投じました。

ところが炎は、ウサギの体の毛穴一つも焼くことはありませんでした。

バラモンさま。あなたの起こした火は、まるで雪のように冷たい。いったいどうしたことでしょう」

「ウサギよ。わたしはただのバラモンではない。帝釈天である。おまえの布施の心を試すために天界から降りてきたのだ」

「あなたばかりでなくどんな人がわたしの布施の心を試そうとも、布施をいやがる気持ちを見つけることはできないでしょう」

「おまえの優れた行いが永遠に忘れられないように」と言って、帝釈天は山を圧搾して汁を搾り取り、丸い月面にウサギの姿を描いて、ウサギに別れを告げ天界に帰って行きました。

その後、4匹の動物は、仲良く暮らし、生活規範をよく守り、その行動にふさわしい果報を得る身となりました。