つぎに無礙光といふは、この日月のひかりは、ものをへだてつれば、そのひかりかよはず。この弥陀の御ひかりは、ものにさへらずしてよろずの有情の煩悩悪業のこころにさへらへずましますによりて、無礙光仏と申すなり。無礙光の徳ましまさざらましかば、いかがか候はまし。かの極楽世界とこの娑婆世界とのあひだに、十万億三千大千世界をへだてたりと説けり。その一々の三千大千世界におのおの四重の鉄囲山あり。高さ高さ須弥山とひとし。つぎに小千界をめぐれる鉄囲あり、高さ第六天にいたる。つぎに中千界をめぐれる鉄囲山あり、高さ第二禅にいたれり。しかればすなわち、もし無礙光仏にてまはさまさずは一世界をすらとほるべからず。いかんにいわんや十万億の世界をや。かの無礙光仏の光明、かかる不思議の山を徹照して、この念仏衆生を摂取したまうにさはることましまさぬゆゑに、無礙光と申すなり。
聞思して遅虜する事なかれ。
